屋久島の昔話
屋久島の昔話に、「大鹿の湯」というものがあります。
むかし、むかしのこと。
年老いた猟師が、犬をつれて、モッチョム岳のふもとに鹿狩りに出かけました。
そのころ、尾之間は大木やシダ類が繁茂し、深いジャングルの間から、高くそびえる尾之間三岳、すなわち、モッチョム岳、耳岳、割石岳の三山が望まれるのでした。
人びとは夏は海に出て漁をし、そのかたわら、わずかばかりの畠を耕しては里芋など植え、冬になると鹿や猿をとってほそぼそとくらしていました。
さて、猟師がジャングルをかきわけかきわけ進んでいると、急に犬が走りだし、茂みの中に消えたかと思うと、声高くほえだしました。
「それっ、えものだ。」
猟師は息をきらして犬のあとを追いましたが、犬の声はしだいに遠ざかって行きます。
しかし犬の遠ぼえをたよりに、猟師は三岳のすそを左へ左へと近道をとりながら、あえぎあえぎかけ登ると、突然、小牛ほどもある大鹿が犬に追われて死にものぐるいでとびだしてきました。
「あっ。」
猟師はおどる心をおさえて、ねらいを定め、二つ弾の鉄砲を放ちました。
ダーン
銃声があたりにひびきわたりました。
すると、大鹿はどうと地ひびき立ててたおれましたが、すぐ起きあがると、たけりくるってかけだしました。
猟師も必死になって追いました。
が、カズラに足をとられて思うように走れません。
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